一周回ってカッコいい!? 今、ガラケーが注目を集めている理由

中高年には懐かしいものでも、若者の目には新しく映るということなのでしょうか?繰り返しやってくるレトロブームの波は、身近なモバイル端末にも及んでいます。中古市場では10年前に発売された「iPhone 6」など古いiPhoneが「エモい写真が撮れる」などとSNSで話題になり、じわじわと売上げを伸ばしているそうです。

今回は古いスマホやガラケーの歴史を紐解きながら、再び注目されている理由と人気の秘密に迫ります。

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旧型スマートフォンが「エモい」と人気

最新端末で撮るコンピュテーショナルフォトグラフィー、つまりAIなどを用いて補正された高精細な写真より、旧端末で撮る解像度の低い写真の方が「エモい」ということなのでしょう。これはインスタントカメラや古いコンデジ、フィルムカメラが、一部の若者に人気を集めているのと同じ流れと言えます。

実は、カメラだけなら「iPhone 5」以前の機種も使えます。しかし、ソフトバンク、auではすでに3Gのサービスは終了。ガラケー、スマートフォンともに、音声通話やデータ通信に3Gを用いる機種は使用できません。ドコモも2026年3月に3Gサービスが終了予定となっています。

欧米で再燃する「フリップフォン」ブーム

一方欧米では、昨年あたりから若者を中心に、フリップフォン(折りたたみ携帯電話)がちょっとしたブームになっているといいます。SNS疲れからデジタルデトックスをしたいというニーズで関心を集めているのが、折りたたみ型や物理キーなど。スマホにないガジェット感が目新しいなど、さまざまな角度から語られています。こうしたブームが日本にも波及するかに注目が集まっています。

日本でもガラケーはいまだに人気ですが、使い慣れたダイヤルキーのあるケータイを使い続けたいというニーズや、特殊な環境で使用する法人ニーズによるものが中心です。たとえば2024年に日本で発売された、ガラケー唯一の新製品は、オルビックジャパンの「Orbic JOURNEY Pro 4G」ですが、これもやはり、法人ユーザーをメインターゲットとするものです。

▲オルビックジャパン「Orbic JOURNEY Pro 4G」。見た目はガラケーですが、中身はスマートフォンに近く、さまざまなアプリが利用できます。

▲オルビックジャパン「Orbic JOURNEY Pro 4G」。見た目はガラケーですが、中身はスマートフォンに近く、さまざまなアプリが利用できます。

多機能でユニークなギミックも豊富だったガラケー

若者がなぜ、古い端末に惹かれるのかはわかりませんが、一見するとどれも同じような一枚板の端末に見えるスマートフォンに対して、ガラケーがガジェットとしてユニークだったのは間違いありません。ガラケー時代の後年には単純な折りたたみではなく、さまざまなギミックを持つケータイや、コラボレーションモデルが多数登場しました。そんなケータイを少し振り返ってみましょう。

お笑いタレントの平野ノラさんが、バブル時代を象徴する小道具として使用しているショルダーフォンが登場するのは、1985年のこと。1990年代に入るとどんどん小型化が進み、1995年にはPHSも登場して、ケータイはぐっと身近なものになりました。折りたたみタイプやカメラ付き、メールやインターネット(と言っても、当時は閉じたサービスでしたが)、2000年代に入るとおサイフケータイやワンセグ(テレビ)が見られるものも登場し、ユニークな端末が次々と登場しました。

▲電電公社が民営化された年に発売された「ショルダーフォン」。重量は3kgで、その名のとおり肩から提げて持ち歩くタイプでした。

▲電電公社が民営化された年に発売された「ショルダーフォン」。重量は3kgで、その名のとおり肩から提げて持ち歩くタイプでした。

▲日本で2つ折りの折りたたみケータイの元祖といえば、NECの「ムーバN」。NECはこの後、数多くの折りたたみケータイを発売しています。

▲日本で2つ折りの折りたたみケータイの元祖といえば、NECの「ムーバN」。NECはこの後、数多くの折りたたみケータイを発売しています。

懐かしの名機種の数々

ソニーのウォークマンケータイや、カシオのG-SHOCKケータイ、シャープのAQUOSフォンなど、今のスマートフォンにもつながるメーカー色を強く打ち出した製品のほか、デザイナーやキャラクターとコラボレーションした製品も多数販売されました。

▲ソニー初のウォークマンケータイ「W42S」(2006年発売)。ソニーの持つ技術をモバイル端末へという流れは、ここから現在の「Xperia」シリーズへ。

▲ソニー初のウォークマンケータイ「W42S」(2006年発売)。ソニーの持つ技術をモバイル端末へという流れは、ここから現在の「Xperia」シリーズへ。

▲カシオのG-SHOCKケータイの元祖「C409CA」(2001年発売)。高耐久モデルは、カシオから京セラのスマートフォンへと受け継がれています。

▲カシオのG-SHOCKケータイの元祖「C409CA」(2001年発売)。高耐久モデルは、カシオから京セラのスマートフォンへと受け継がれています。

▲シャープのAQUOSフォン「905SH」(2006年発売)。ボーダフォン(現ソフトバンク)のワンセグ対応ケータイとしてデビュー。画面が横になるギミックが斬新でした。

▲シャープのAQUOSフォン「905SH」(2006年発売)。ボーダフォン(現ソフトバンク)のワンセグ対応ケータイとしてデビュー。画面が横になるギミックが斬新でした。

時代を超えて愛される「INFOBAR」シリーズ

中でもいまだに根強い人気なのが「au Design project」として登場した、「INFOBAR」シリーズです。

「INFOBAR」シリーズはプロダクトデザイナー深澤直人がデザインを手がけ、ニューヨーク近代美術館(MoMA)の永久収蔵品に選定されたことも話題になりました。スマホの時代になっても、クラウドファンディングなどを通じて関連製品が発売され、当時のユーザーや新しいファンに支持されています。2024年春にもケータイ型のApple Watchケースが発売され、注目を集めました。

▲クラウドファンディングを経て、数量限定で発売された初代INFOBAR型のApple Watchケース

▲クラウドファンディングを経て、数量限定で発売された初代INFOBAR型のApple Watchケース

なお、こうした懐かしい端末たちは、東京都墨田区にある「NTTドコモ歴史展示スクエア」や、東京都多摩市の「KDDI MUSEUM」など、キャリアが提供する博物館へ足を運べば、実際に見ることができます。興味のある方はぜひ足を運んでみてください。

KDDI MUSEUM

▲東京都多摩市にある「KDDI MUSEUM」は事前予約制で、平日なら誰でも見学ができます。

スマートフォンも折りたたみの時代に突入?

ガラケーは、ガシャポンでも不定期にミニチュアシリーズが登場して人気を博しているなど、懐かしさと新しさの両面から、今後もさまざまな形で残り続けていくでしょう。一方でスマートフォンでも、かつてのガラケーのようなギミックを持つ製品が徐々に増えてきています。

たとえばサムスンやモトローラから発売されている、折りたたみスマートフォンもそのひとつ。特に縦折りのフリップタイプのモデルは、折りたたんでコンパクトに持ち歩けるという点で、かつての折りたたみケータイと近い発想の製品だと言えます。2024年には、閉じた状態でも外側のサブディスプレイでさまざまな操作ができるモデルが登場し、これまでに比べて買いやすい価格設定や、キャリアの施策もあって、徐々にユーザーを増やしています。

▲サムスンの折りたたみスマートフォン「Galaxy Z Flip6」は、オンデバイスAIを搭載し、ディスプレイの折れ目を目立たなくするなど、最新技術が満載。

▲サムスンの折りたたみスマートフォン「Galaxy Z Flip6」は、オンデバイスAIを搭載し、ディスプレイの折れ目を目立たなくするなど、最新技術が満載。

▲モトローラの「motorola razr 50」は約3.9インチのサブディスプレイを搭載し、閉じた状態でもQRコード決済などが利用できます。

▲モトローラの「motorola razr 50」は約3.9インチのサブディスプレイを搭載し、閉じた状態でもQRコード決済などが利用できます。

タブレットサイズのディスプレイをスマートフォンサイズで持ち歩ける横折りの折りたたみスマートフォンは、サムスンのほかグーグルからも2024年に新製品が登場しました。また、中国ではファーウェイが3つ折りのスマートフォンを発表し、注目を集めています。

▲ファーウェイの3つ折りスマートフォン「HUAWEI Mate XT ULTIMATE DESIGN」は、最大7.9インチの大画面が利用できます。

▲ファーウェイの3つ折りスマートフォン「HUAWEI Mate XT ULTIMATE DESIGN」は、最大7.9インチの大画面が利用できます。

デジタルデトックス時代の救世主?再び脚光を浴びるガラケーの魅力

ガラケーは必要な機能だけに特化したシンプルさと、落としても壊れない耐久性の高さが魅力でした。

これからのスマートフォンは拡張現実(AR)や仮想現実(VR)デバイスと一体化し、メガネやヘッドセットのようなデザインになるかもしれません。また、音声アシスタントがさらに進化すれば、ディスプレイなしで操作ができる時代へ突入するかもしれません。

そんな中でも、ガラケーが持つシンプルな魅力は、情報過多に疲れた現代人にとって、デジタルデトックスの手段として、懐かしさとともに再評価されるのではないでしょうか。

取材・文/太田百合子 イラスト:D★FUNK 編集:木崎・稗田/なるモ編集部

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