Open AIの「Chat GPT」や、マイクロソフトの「Microsoft CoPilot」、グーグルの「Google Gemini」など、生成AIを業務の効率化のために積極的に取り入れる事例が増えています。
これらの生成AIはブラウザから利用できるだけでなく、スマホアプリとしても提供されていて、有料のサブスクリプションサービスも用意されています。アプリではいずれもテキストでさまざまな問いかけができるほか、音声で話しかけることも可能。長文入力が面倒なスマホでも、便利に使うことができます。
今回はこれら3つの生成AIアプリと、最新のスマートフォンに搭載されているAI機能を取り上げ、ビジネスシーンに活用する方法を紹介します。
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1.情報収集するならChat GPT
生成AIは何か知りたいことがあるときに、「~について教えて」「~はどうすればいい?」のように尋ねると、たいていの質問に答えてくれます。これまでの調べものでは、検索窓にいくつかのキーワードを入力して、検索結果から該当する情報を探すという方法が一般的でしたが、生成AIでは人に話しかけるように質問するだけで、ダイレクトに答えを引き出すことができます。
最近ではその方法もより自然なチャットに近いものになっていて、「Chat GPT」アプリでは、好みの声を選んで、本当に友人や同僚と話すような自然さで会話ができます。一問一答ではなく、途中で付け加えたり、話を挟んでも、これまでの会話の流れから内容を理解し、答えてくれます。
さらにテキストだけでなく、画像やドキュメントなどのデータも理解し、処理できる「マルチモーダル」をサポートしているので、画像をアップロードして、その内容に基づいた会話をすることも可能です。
従来のようにWEBを検索して情報収集をする場合も、AIがサポートしてくれます。生成AIに情報を得たいサイトのURLをポストして、その内容を翻訳してもらったり、要約してもらうことも可能。前述のようにマルチモーダルに対応しているので、サイトだけでなく動画をポストして、その内容を翻訳、要約してもらうこともできます。
「Galaxy」シリーズのフラッグシップモデルでは、ブラウザでサイトを開き、その画面からダイレクトに翻訳や要約ができる機能も搭載されています。
文章を考えてもらうならMicrosoft CoPilot
生成AIは作文が得意です。「お礼文を考えて」「謝罪文を考えて」のように依頼すれば、一瞬でたたき台を作ってくれます。「~について伝えたい」「~を説明したい」など、より具体的に指示をすれば、その内容も盛り込んで文章を作ってくれます。ビジネスシーンでは、日々やり取りするメールの文章を考えてもらったり、プレゼンのたたき台となる文章を作ってもらうなど、さまざまな文章の作成に活用できます。
試しに「Microsoft CoPilot」アプリで、AIによる文章作成の活用例を聞いてみたら、こんな答えが返ってきました。
「Galaxy」シリーズのフラッグシップモデルでは、文章を生成してダイレクトにEメールなどに反映することもできます。「プロフェッショナル」「カジュアル」など、文章のトーンもカスタマイズできます。
3.翻訳するならGalaxy
生成AIのおかげで、今や言葉の壁も易々と乗り越えられるようになりました。「1.情報収集する」でも紹介したように、日本語のサイトだけでなく世界中のサイトを翻訳&要約できるので、広く情報を収集できますし、英語の論文など長文の翻訳も可能です。また伝えたい情報を複数の言語に翻訳してもらい、世界に向けて発信するなんてこともできます。
AIによる翻訳は生成AIアプリだけでなく、スマートフォンの機能としても搭載されるようになってきました。「Galaxy」シリーズのフラッグシップモデルやASUSの「Zenfone 11 Ultra」など、最新のスマートフォンには、通話アプリに翻訳の機能が組み込まれていて、電話をかけるとその内容をリアルタイムに通訳してくれます。またこれらのスマートフォンでは、LINEなどのメッセージアプリでも翻訳機能が使えるようになっています。
これまでも翻訳アプリなどはありましたが、グーグルの「Google Pixel」シリーズなど、最新のスマートフォンではクラウドではなくスマートフォン内でAIの処理を行っているため、レスポンスが早く、リアルタイムの翻訳が可能になっています。異なる言語を話す人と、より自然にコミュニケーションができれば、いろいろな仕事の助けになるでしょう
4.文字起こしならGoogle PixelやiPhone
音声を認識してテキスト化する「文字起こし」も、AIを使って簡単にできるようになってきました。生成AIの進化に伴い、その精度も高くなっています。英語なら「Otter」、日本語なら「Notta」や「AutoMemo」、「LINE CLOVA Note」などのアプリもありますが、最新のスマートフォンでは、標準搭載の音声レコーダーアプリに、文字起こしの機能が備わっているものも登場しています。
グーグルの「Google Pixel」シリーズでは、文字起こしをクラウドではなく、スマートフォン内で処理しているため、音声を録音しながら、同時に文字を起こすといったことも、できるようになっています。また、複数の話者の声を聞き分けて、話者ごとに文字起こしをすることも、できるようになってきました。こうした機能を使えば、会議の議事録を自動作成することも可能。さらにその内容をAIに要約してもらえば、レポートを作成する仕事を大幅に効率化できるでしょう。
ほかにもiPhoneの「iOS 18」では、留守番電話のメッセージをリアルタイムにテキスト化できる「ライブ留守番電話」機能が利用できるようになりました。わざわざ聞かなくても、内容が把握できる便利な機能ですが、これもAIによる文字起こしのひとつです。また「Google Pixel」シリーズでも、ユーザーの代わりに電話に出て、相手の話をテキストで表示する「通話スクリーニング」という機能が利用できます。このほかシャープの「AQUOS」シリーズの最新モデルでも、同様のしくみを使って詐欺電話を警告してくれる機能が提供されています。
5.文書をまとめるならSamsung Notes
生成AIは文章を作成できるばかりではなく、それを文書にまとめるのにも一役買ってくれます。要点をまとめる「要約」ができるのは前述の通りですが、箇条書きにする、リスト化する、見出しや小見出しをつけるなど、一定の書式に文書をまとめるのも得意です。マイクロソフトの「Microsoft CoPilot」は、すでに文書作成ソフトの「Microsoft Word」にも組み込まれています。有料サービスですが、テキストで指示をすれば、思い通りのフォーマットの文書を作成できます。
「Galaxy」シリーズのフラッグシップモデルでは、高性能なメモアプリ「Samsung Notes」で「自動フォーマット」という機能が使えます。これは下書きしたテキストをAIが解析して、自動的に体裁の整った文書に成型してくれるというもの。文章を作成するところから、要約してまとめて、それを提出が可能な一定の書式の文書にするところまでのすべてのステップに生成AIが活用でき、しかもそれがスマホひとつでできるというわけです。
生成AI活用の留意点
スマホでも手軽に使えるようになった生成AI。ここまで紹介してきたように、いろいろなビジネスシーンで便利に使え、仕事の効率化に役立ちます。
ただし今はまだ発展途上であり、その使い方には気を付けなければならないこともあります。たとえば生成AIを情報収集に使用する場合、その回答は最新のものではないこと、オンラインにある情報などをベースにしているため、必ずしも正しい内容ではないということには、留意する必要があります。またAIがどんな情報から学習しているかによって、その回答に偏りが生じている可能性もあります。
できるのはあくまでも仕事のサポート、たたき台づくりと考えて、上手に活用したいところです。
取材・文/太田百合子 イラスト:D★FUNK 編集:木崎・稗田/なるモ編集部