スマホ価格の高騰で二次流通が活況 中古スマホの購入・売却で注意すべき点とは?

物価高や円安の影響で最新スマホの価格が高騰する中、二次流通、つまり中古端末の人気が高まっています。MM総研の調査MM総研の調査によれば、2022年度の中古スマホの販売台数は234万台で、前年度から10.4%の増加。4年連続で過去最高を更新していて、2023年度、2024年度も拡大基調は続くと見込まれています。

とはいえ、スマホは精密機器だけに、中古と聞いて不安に感じる人も少なくないと思います。街中には多くのリユース専門店がありますが、そこで販売されているスマホは、本当に買って大丈夫なのか。また今持っているスマホを売るにはどうしたらいいのか。中古スマホの売却時と購入時、それぞれの注意点をまとめて紹介します。

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中古スマホ売却時の注意点

データをバックアップし、アカウントを削除する

スマホを手放すと決めたら、まず最初にやるべきはバックアップです。機種変更をする場合は、新しいスマホにデータが完全に移行されたことを確認してください。最近のスマホの多くは、アカウントに紐付くクラウドサービスに、データをまるごとバックアップできるようになっています。おかげでちゃんと最新のデータさえバックアップしておけば、万が一のスマホ紛失時や故障時にも、写真や動画、音楽、アプリなどのデータを、新しいスマホに簡単に引き継ぐことができます。

バックアップができたら、次にスマホからAppleやGoogle、メーカー固有のアカウントを削除します。アカウントが設定されたままになっていると、仮にスマホからデータを削除しても、前述のクラウドサービスを通じていつでも元に戻せてしまうからです。後述するスマホの初期化によってもアカウントは削除できますが、事前に「iPhoneを探す」「スマホを探す」といった機能は、必ずオフにしておきます。「iPhoneを探す」「スマホを探す」はクラウドサービス側からスマホを探したり、コントロールできる機能で、これがオンのまま、つまり、アカウントとスマホが紐付いたままになっていると、売却後に新たに端末の所有者となる人が、自身のアカウントを紐付けできない可能性があり、結果、売却が不可となる場合があります。

おサイフケータイを利用している場合は、各サービスごとに手続き

おサイフケータイのデータはスマホ本体のデータとは別になっていて、後述するように本体を初期化しても、おサイフケータイのデータは残っていることがあります。特にAndroidスマホでは注意が必要です。おサイフケータイのデータの移行や、削除の方法はSuicaやPasmo、楽天Edy、WAON、ID、QUICPay、nanacoなど、各サービスによっても異なるため、サービスごとに紹介されている手順に従って、手続きを行う必要があります。もし、おサイフケータイのデータを事前に削除せずに、本体のデータを初期化してしまった場合は、スマホを購入したキャリア等で別途、データを削除してもらう必要があります。

おサイフケータイ

▲おサイフケータイのデータは本体のデータを消去しても残ることがある。楽天Edy、WAON、ID、QUICPay、nanakcoなど、各サービスによっても異なるので注意が必要

なお、マイナンバーカードと同等の機能を持った「スマホ用電子証明書搭載サービス」を利用したスマホを売却する場合は、さらに注意が必要です。事前に必ず「マイナポータルアプリ」から、スマホ用電子証明書の失効手続きを行ってください。

ロック解除と初期化(工場出荷時の状態に戻す)は必須

スマホをリユース専門店に持ち込む場合や、フリマアプリなどを通じて他者へ販売する場合、その前に必ずやらなければいけないことが、ロック解除と初期化です。初期化とは、端末を工場出荷時の状態に戻すこと。つまり一番最初に買ったときと同じ状態、あなたに関わる情報が何も入っていなかった以前の状態にすることです。指紋や顔認証、パスワード等で画面ロックを設定している場合も、初期化をすればロックは自動的に解除されます。

初期化iPhone

▲iPhoneの初期化設定

初期化Android

▲Androidの初期化設定

スマホではデータが暗号化されているため、初期化をすれば基本的にはデータがすべて削除されます。しかし旧機種の場合は、メーカーによって暗号化の仕様や強度が異なるため、データが復元されるリスクがゼロではありません。心配な場合は、専用のソフトを用いてフォーマット等を行い、キャリアやリユース販売店へ売却しましょう。最近はフリマアプリでも専門業者に委託して、データ消去してから相手に届けるサービスを提供しています。

SIMカードやmicroSDカードを取り外す

SIMカードには電話番号などの契約情報が入っています。またmicroSDカードに対応しているスマホでは、写真や動画などのデータがカード内に保存されていることがあります。これらはスマホを手放す前に必ず取り外して、なくさないように保存しておきましょう。特にSIMカードは、なくしてしまうと次のスマホで電話番号などを引き継ぎたいときに再発行が必要になりますので、注意してください。

SIMカード

旧機種の場合はSIMロックを解除する

2021年10月1日以前に発売されたスマホの中には、SIMロックといって特定のキャリアでしか使えないようなロックがかかっているものもあります。ロックがかかった状態でも、引き続き同じキャリアで利用する場合には問題ありませんが、リユース専門店などによっては、ロックが解除されている方が高く買い取ってくれるケースもあります。ロック解除はオンラインでも手続きできますので、キャリアのホームページなどで確認されることをおすすめします。

スマホの状態を確認し、付属品をチェックする

リユース専門店では独自の査定基準を設けていて、スマホ外観の傷や汚れや、ディスプレイの状態、カメラやスピーカーの動作、バッテリーの減りなどのほか、付属品が揃っているかどうかでも、買い取り価格が変わってくることがあります。自身でも事前にスマホの状態や、付属品の有無を確認しておきましょう。

フリマアプリなどで個人売買する場合は、スマホの状態をできるだけ詳しく開示します。売り手と買い手の間に認識の齟齬があるとトラブルになりやすいので、注意しましょう。

中古スマホ購入時の注意点

購入予定のスマホがいつまで使えるかを考えて選ぶ

メーカーは旧機種に対しても、OSやセキュリティのアップデートをサポートしていますが、このサポートは永久に続くわけではありません。最新機種でもメーカーがアップデートを保証しているのは、4年から長くても7年といったところ。アップデートができなくなると、新しいOSで提供される機能が利用できないだけでなく、OSにあわせて更新される最新のアプリが使えなくなる可能性もあります。中古スマホを購入する際は、あとどのくらいアップデートがサポートされるかも置いて選びしましょう。

利用できるSIMカードの種類やeSIM対応をチェック

スマホはキャリアが発行する、電話番号などの情報が書き込まれたSIMカードを挿入、または同じ情報をeSIMにダウンロードすることで、モバイルネットワークを使った通信や通話が可能になります。現在発行されているSIMカードは主に「nano SIM」と呼ばれるサイズですが、古い機種では「micro SIM」が使われていることもあります。

またこれは中古スマホだけに限りませんが、たとえば今まで使っていたスマホが4G対応の端末で、次に購入する端末が5G端末の場合など、購入予定のスマホがどのサイズ、どの種類のSIMカードに対応しているかによっては、キャリアでSIMカードの交換が必要になることがあります。

また、最近では前述のeSIMに対応したスマホも増えています。eSIMに対応したスマホでは物理的なカードを挿入しなくても、情報をダウンロードするだけですぐに使い始められるのがメリット。逆にeSIMで契約しているのに、購入端末がeSIMに未対応の場合はSIMカードを発行してもらう必要があります。

キャリアの周波数とスマホの対応周波数を確認

大手キャリア(ドコモ、au、ソフトバンク、楽天モバイル)では、使用している周波数帯(バンド)が少しずつ異なります。また大手キャリアの設備を借りてサービスを提供しているMVNO(格安スマホ)でも、キャリアごとのプランに応じて、異なる周波数帯を使用します。このため、中古に限らずスマホを購入する際には、利用したいキャリアの使用周波数帯と、スマホの対応周波数帯が一致しているか、確認することが重要です。

各キャリアとも複数の周波数帯を使用しているので、その一部にでもつながるスマホは利用できますが、合致している周波数帯が少ないと、通信が不安定になって場所によってつながりにくかったり、速度が出ないことがあります。

同じメーカーの同じ機種でも、販売するキャリアごとに対応する周波数帯が異なることがあるので注意が必要です。また海外向けのモデルなどは、同じ機種でも販売する国によって対応する周波数帯が異なる場合もあります。

SIMロックが解除されているかチェック

2021年10月1日以前に発売された機種を中古スマホとして購入する場合は、SIMロック解除がされているかを確認しましょう。売却の際の注意点も書いたように、SIMロックがかかっている端末はロックを解除しない限り、特定の大手キャリア、またはそのキャリアのプランを取り扱うMVNO(格安スマホ)のサービスしか利用できません。

アクティベーションロックと登録解除の確認

売却の際の注意点でも紹介したように、スマホが前の所有者のアカウントに紐付いたままになっている状態を、アクティベーションロックといいます。アクティベーションロックがかかっていると、特にiPhoneの場合は自分のIDを登録できないなど、使用に支障をきたします。リユース専門店ではロック解除を確認した上で製品を販売していることが多いですが、個人売買の場合は、ロックがかかっているとあとから解除してもらうのは面倒なので、事前に確認するようにしましょう。

外観や機能、バッテリーの劣化状況をチェック

店頭で購入する場合は製品の状態を確認できますが、オンライン販売を利用する場合や、フリマアプリを使った個人売買の場合は、実際に手に取って見ることができません。写真で傷などをチェックしたり、ディスプレイやカメラ、スピーカーなどの動作状況や、バッテリーの劣化状況についても情報を確認し、納得した上で購入するようにしてください。

「赤ロム」に注意しましょう

割賦払いの残債が未払いのままになっていたり、盗難品だったり、キャリアからネットワークの利用に制限がかけられている状態のスマホのことを、「赤ロム」と言います。購入した端末が万が一「赤ロム」だった場合も、リユース専門店によってはきちんと補償をしてくれます。ごく稀ですがこうしたスマホが出回っているケースもありますので、その場合の補償の有無などについても確認しておくと安心です。

信頼できる販売者から購入する

スマホに限らず中古の製品を購入する際には、信頼できる販売者から購入することが重要です。リユース専門店を利用する場合は、事前に返品ポリシーや補償内容を確認して、安心できるお店で買うようにしましょう。専門店の場合はお店ごとに査定結果によるランク分けを表示するなど、端末の状態もわかりやすくなっています。

個人売買の場合はトラブルを避けるために、評価など売り手の信頼性を確認するとともに、購入前には端末の詳細な情報をしっかりチェックするようにしてください。オンラインで購入する際は特に、写真だけでなく端末の動作状況やバッテリーの劣化などについても確認し、納得した上で購入しましょう。

ここまで紹介してきたように、中古スマホの売買には、新品の購入にはないリスクがあります。一方で中古とはいえ、人気機種を安価な価格で購入できるのは、そうしたリスクを補ってあまりある大きな魅力とも言えます。最近は二次流通市場でも、より安心して購入できるように、様々なルールづくりが行われています。また環境対策のために、キャリアやメーカーによる中古スマホの買い取りや、リユース品、整備品の販売も積極的に行われるようになってきています。紹介した注意点を踏まえて、信頼できる相手から購入すれば、きっと満足度の高いスマホが入手できるでしょう。

取材・文/太田百合子 イラスト/D★FUNK 編集:木崎・稗田/なるモ編集部

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