社内チャットをもっと盛り上げたい!コミュニケーションのきっかけづくりに、ビジネスチャットで毎日日記を書いた結果

DXやリモート化にともない、社内のコミュニケーションにビジネスチャットツールを使用する場面が増えました。

TeamsやSlack、Chatworkなど、働く場所は離れていてもスムーズな意思疎通ができるチャットツール。リモートワークの強い味方として活用される一方で、「文字のコミュニケーションが得意ではない」「味気ない」と感じてしまう人も少なくないかもしれません。

では、皆がオフィスに出社していた頃のように「チャットを通して、わいわい話す」ようなコミュニケーションは、チャットツールではやはり難しいのでしょうか?

そこで今回は「社内のチャットツール上のコミュニケーションをより活発にする」ため、「なるモ」編集部のメンバーで、ある検証に挑戦します。名付けて、「社内のチャットルームに毎日日記を書いたらどうなるのか?」チャレンジです。

チャレンジのルールはこちら。

・社内チャットに約1カ月、担当者が毎日「日記」を書き、投稿。

・メンバー3人が持ち回りで担当者を務める

・日記の内容は自由。毎日お昼頃に投稿をする

・使用ツールは「Chatwork」。チャレンジ用のチャットルームを新設

・新設したチャットルームには、担当者の他約10名が参加

・たくさん反応がもらえるようにがんばるが、反応がなくてもめげない

こちらのルールをもとに、「投稿した日記を通して、社内のコミュニケーションを盛り上げる」という目的で行ったチャレンジしました。

チャレンジの参加者はこちら。それぞれの書いた日記と一緒に紹介します。

<日記を書いた人>

編集部T

編集部T 日記を書く担当の1人目。プライベートでは滅多に絵文字を使わないが、ビジネスチャットでは、人に何かをお願いするときに、おじぎをしている人の絵文字を使いがち。 編集部O

編集部O 日記を書く担当者2人目。リモート下のビジネスチャットでは「家でもしっかり働いてます」という姿勢を見せるために、とにかく素早い返事を心がける。

編集部M

編集部M 日記を書く担当の3人目。メンバーの中では唯一、大阪在住&フルリモート。月に1度、1週間ほど東京に出社している。

伊藤

伊藤 企画の考案者で、チャレンジの進行を担当。ビジネスチャットでは、「うまいこと言ってやろう」という気持ちが先行して、いつもレスが遅くなる

チャットに日記を投稿することで、コミュニケーションは盛り上がったのか?どんな内容がウケて、どんな事件が起きたのか?約1カ月のチャレンジを受けて、参加メンバーで座談会を行いました。

※ 今回の検証は、担当ライター(および日記の担当者)が所属する編集プロダクション「有限会社ノオト」の社員を参加者として巻き込んで行いました

チャットの会話「気軽に発言しづらい」問題

伊藤

さて、皆さんには約1カ月、「社内チャットに日記を書く」検証にご協力いただきました。やってみていかがでしたか?

編集部T

「仕事の一環として日記を書いていいんだ……!」と最初はワクワクしていたんですが、数日おきでも定期的に書くのは意外と大変でした。とにかく、日常をいろいろな目線で見ながらコツコツ続けてみたら、それはそれで楽しかったです。

編集部O

僕もなかなか楽しくやったんですが……それにしても、ここまで反応がないものか、と(笑)。他の方からのリアクションを得られるよう「ツッコミどころ」がある内容を書いたりしていたんですけど、それでもなかなか、という感じでした。

伊藤

確かに。理想としては、投稿がきっかけとなってチャットで雑談的なコミュニケーション発生して、いろいろな人がわらわら参加してくる……という様子を想像していたんですけどね。書いた日記に対しても、何かしらのリアクションがあるのは1〜2件で、そこから独り立ちして会話が盛り上がる、なんてことはなかなか起きなかったです。

編集部M

私も「他の方がリアクションしやすいような話題」を意識して家事とか料理の話とかを書いていたんですが、確かに、思ったほどの反応がなかったですね……。

編集部T

そうですね。私も反応が薄いことはかなり早い段階で受け入れて、多少リアクションがなくても落ち込まないように、というのは心がけていました。みんなが身近に感じてくれそうな話題を取り上げつつも、基本的には書きたいことを書く。そうすれば、多少リアクションが薄くても落ち込まないので。

編集部M

返事が来やすいかなと思って「皆さんはどう思いますか?」みたいな、投稿のなかで質問を投げかけたりしてみたこともあったんですが……。これはこれで、皆さんに返事を強いているみたいで違うな、と思って。質問を投げなくても、反応をもらえるときはもらえるし、もらえないときはもらえないんだな、と少しずつわかってきました。

伊藤

検証に参加してくれたメンバーはほとんど20代〜30代で、普通にしていればそこそこ会話も雑談もするはずなんですけどね。どうしてチャットではこんなに大人しいんでしょう?

▲検証開始前にライター伊藤が社内チャットに投稿した、読書の感想文。反応を求めた投稿ではなかったが、リアクションしたのは1名(しかもスタンプのみ)。寂しくなかったかと言ったら嘘になる

編集部O

もちろん「日記の内容にピンと来なかった」可能性もゼロではないですが、どちらかというと「社内チャット」という場所の問題だと思うんですよね。パブリックな場所なので、どうしても発言の価値を意識しがちで、気軽な投稿がしにくいじゃないですか。一言だけ「すげえ!」みたいな投稿するのは違うな、と思った人が多いのかもしれない。

編集部T

それ、私も思っていました。チャットって文字として残るから、どうしても投稿するときに気負っちゃうんですよね。そういう意味では、対面の雑談は「ログが残らないから気楽」だったんだな、と改めて気付きました。

チャットの日記、「読んでいるが、反応しない」ケースも?

伊藤

約ひと月の検証でいろいろな投稿がありましたが、印象に残っている出来事はありますか?

編集部T

やっぱりOさんのカルパスの事件じゃないですか?

伊藤

それか(笑)。全体を通して社員からの反応は薄めでしたが、チャットルームが一番盛り上がったのはOさんのカルパス事件でしたね。

▲たまたま寄ったゲームセンターでカルパスを190個獲得した編集部O。思わぬ大量の差し入れに、社内が沸いた

編集部O

確かに、この日記は反応が多くてうれしかったですね。しかし、なんであんなに反応があったんだろう……。

編集部T

食べられるっていう、喜び?「出張のお土産買ってきました〜」みたいで、反応しやすい話題なんだと思います。

伊藤

他には、普段の投稿と違って「見ている全員が関係者になった話題」と考えることもできますよね。

編集部O

「個人の生活の話」というよりは、「皆さんにプレゼントがあります!」という話題ですからね。メッセージとして受け取ってくれたのかな。

伊藤

弊社の場合だと、日頃からにぎやかなわけではないですが「オフィスで虫が出た!」とか「入り口の鍵を忘れた!」とか、ちょっとしたトラブルのときは社員が続々とチャットルームに出てくるじゃないですか。カルパスのときは、その手のトラブルに皆で対処するときの雰囲気に近かったですよね。

編集部O

僕も同じことを考えていました。そして、こういうときはチャットが盛り上がる。

▲カルパス事件に対する反応の一部(担当・伊藤も少しだけ参戦した)

伊藤

これを「普段は静かでも、有事のときには皆がチャットに出てきて、トラブルに対処している」状況なのだと考えると、弊社はそれなりにビジネスチャットのコミュニケーションが上手にできているんじゃないかと僕は考えたんですよ。「誰かに起きたトラブルを他の社員が無視せず、解決に向けて適切なコミュニケーションを取れている」ということなので。

編集部M

そうですね。チャットの場での反応がなくても、みなさん実際に投稿は読んでくださっているんですよ。私が出社して、会社の人と直接会ったときに日記で書いた内容の話題に触れてもらうことが何度かありました。日記が直接のコミュニケーションにつながったんですよ。

編集部T

リアルの場でリアクションするの、私はやってしまいがちですね。オンライン上ではあまり反応しないくせに、直接会ったときに「そういえば、この前Twitterで書いていたアレ、どうでしたか?」みたいな話をしちゃうんです。

伊藤

企画の趣旨を壊しかねない発言ですが、なんとなく気持ちはわかります。

編集部T

ビジネスチャットみたいな反射的に返すテキストのコミュニケーションがあまり得意ではないんですよね。でも、送られてきた内容はちゃんと読んでいるし、印象的なものはきちんと覚えているんです。そういう人も意外といるのかもしれないですね。

編集部M

私は一人だけ生活の拠点が皆さんと離れている(※)ので、「普通の雑談」をする機会が少ないんですよ。なので、書いたことをきちんと覚えてもらっていて、リアルの話題にしてくれるというのは、たくさん反応がある以上にびっくりしたし、うれしかったんですよ。

※ 他の参加メンバーとは違い、編集部Mだけ関西在住でリモート勤務の社員。今回に限らず、社員とのコミュニケーションのほとんどはチャットツールを通して行っている

伊藤

チャットで書いたことが、オフラインのコミュニケーションにつながるとは。可視化しにくいものですが、ポジティブな結果のひとつですね。ツールのなかで起きることばかり意識してしまいがちですが、これもひとつの効果として喜んでよさそうです。

「ゆるくコミュニケーションを取る」空気の共有が必要

伊藤

そして、2週目、3週目に入ると、反応が本当に少なくなってきましたよね。読む側も悪い意味で慣れてきたんだと思うのですが、僕が「やばい!マンネリ化してる!」と不安になって検証自体を切り上げてしまったんですが。

編集部O

個人的には、皆さんからの反応が薄くなってきた後半戦のほうが僕は楽しかったんですよ。たぶん最初は読み手側も「反応しなきゃ」と気を使っていたと思うんですが、だんだん「無理して反応する必要はない」という雰囲気が浸透してきて、そうなってくると、逆に僕らもどうでもいいことを書きやすいじゃないですか。

編集部T

私も、終盤のほうが楽しかったです。特に無理せず好き勝手に書けたし、好きに書いたものを読んでもらえたし。逆に、「反応を求めていない投稿が並んでいる場所」のほうが読む側も気楽だと思うんですよね。

▲「思いついたことをそのまま書いた」という編集部Tの終盤の日記。LINEの話からパーティーへ、パーティーから隣人へと、話題が次々と転がっていくあたりに、自由に書いている様子がうかがえる

伊藤

では、数週間の運用でチャットルーム全体に「こういう雰囲気で参加すればいい」という暗黙の了解が生まれた、という感じでしょうか。それが今回の場合は「書く側は好き勝手に書いて、反応は求めない」「読む側は一応目を通すが、適当に反応してOK」という共通認識だった、という。「どういう温度感で運用するのか」はやってみる上でも重要そうですね。

編集部M

これは今回の企画のときに限らず思っていたんですが、今回の検証に参加してくれた方たちって、みんなテキストのコミュニケーションにすごく慣れているんですよ。「テキストを通じて行う、ちょうどよいコミュニケーション」の足並みが揃っているんです。私は以前にいた会社でもChatworkを使っていたんですが、そのときは「チャットで雑談する」という発想がそもそもなかったですから。

伊藤

お、詳しく聞かせてください。前職ではどんな感じでチャットを使っていたんですか?

編集部M

「会社全体」とか「部署のメンバー」ごとにチャットルームが設けられていて、案件や内容に関わらず、すべてのやりとりをそのチャットルームで行う、という感じでした(※)。ほぼ業務上のコミュニケーションが行われるだけで、トラブルがあったらチャットではなく対面で話をするんです。あくまでもメインは対面で、サブチャンネルとしてチャットを使っている感じでしょうか。

※ 検証で使用したビジネスチャットツール「Chatwork」は、目的や内容ごとにチャットルームを設ける形で使用する。チャットルームごとに参加者も設定できるため、「役員3名のみのチャットルーム」「上司は閲覧不可な、部署メンバーのみのチャットルーム」等の運用が可能

編集部O

実際のオフィスで、デスクが近い人同士で話すのと同じ状況だ。チャットに重きを置いていない会社だと、そういった使い方をしているケースも少なくなさそうですね。

編集部M

でも、そういう使い方をしていると、チャット内で仕事と関係ない発言がしにくいんですよ。「どうでもいい発言をすると、重要なログが流れてしまいそう」とか考えちゃうので。

伊藤

では、チャットルームの整備ができていない会社は、まず「雑談」チャットルームを開くところからかもしれませんね。きっと「テキストコミュニケーションの丁度いい温度感」は会社ごとに異なっているので、そこで丁度いい温度感を探っていくことになるのでしょうか。

日々の投稿から、個性が出てくるおもしろさを味わいたい

伊藤

皆さん検証からいろいろな学びを得たと思うのですが、「社内チャットに日記を書く」のは、社内のコミュニケーション改善に良いと思いましたか?

編集部O

割と良いのでは、と思っています。でも、先ほども話した通りテキストコミュニケーションに対する慣れと、「社内でなんとなく温度感を揃えること」が必要かもしれません。その前提があれば、書く側も読む側も、必要以上に心配せずに続けられるのでは、と思いました。

編集部M

あとは、それぞれの投稿から「その人」が見えてくるのがおもしろいですよね。なにを書くかでもだいぶ個性が出るし、その人を知ることができる。普段知ることができない一面を見られるので、他の人が書いたものも読んでみたいな、と思いました。

編集部T

私はMさんの日記を見て、「ちゃんと生活している!」って感じてました。お料理の写真とか、素敵でしたし。

編集部M

本当ですか、ありがとうございます!

編集部O

投稿してくれた写真から、Mさんの生活の様子が垣間見えて楽しいんですよね。「これ、机の上を慌てて片付けたんだろうな」っていう写真もありましたけど……。

編集部M

うっ、その通りです……。

▲話題になった、編集部Mの料理の投稿(画像は本人の希望でぼかしを入れています)。社内チャットというクローズドな場ではあるものの、写真の投稿は読み手に与える情報が多くて難しく、そこがおもしろい。

伊藤

身も蓋もない話をすると、人によっては「会社にいる人のことなんて興味ない!」って言っちゃう人も世の中にはいますよね。皆さんは、同僚がどんなことを考えているかが割と気になっている様子ですが。

編集部T

私はすごく気にしちゃうほうですね。同僚に限らず、他の人のTwitterのお気に入り欄とか見に行っちゃうくらいです。

編集部O

一緒に仕事する人だからこそ知っておきたい、というのはあるかもしれないです。仕事のコミュニケーションって真面目にやるのが当たり前だから、ちょっとふざけたり無礼があったりしたら怒られるんじゃないかってみんな思っているじゃないですか。でも、その人の内面とか「遊び」の部分を知っておくだけで、仕事のコミュニケーションも気負わずにできることもあるのかな。

伊藤

「この人が相手だったら、これくらいふざけても大丈夫だろう」じゃないけど。

編集部M

具体的になにを教えてほしい、というわけではないのが難しいんですけどね。長期間続けたら、そういう情報が蓄積されていって、より価値のある場になりそうだな、と思いました。

伊藤

確かに。そういう「あえて言うほどでもない、自分のこと」を書く場にするなら、今回のようなやり方があっているのかもしれないですね。心理的安全性(※)を考えると、会社の上司とか役員とか、もっとたくさんの人を巻き込んでやるべきなのかもしれない。

※ 心理学用語。組織や会社のなかで、社会的なペナルティを受けることや拒絶されることを心配せず、自分の考えや気持ちを発言できる職場のことを「心理的安全性が高い職場」のように言う

伊藤

では最後に、今回のようなチャットルームの運用を継続的に行うのであれば、より良い場にするためにどういうルールでやってみるのが良いと思いますか?

編集部T

なにかテーマのようなものがあるとうれしいです! 毎日書く内容を決めるのが意外と大変だったので。

編集部O

日記ではなく、自分が撮った写真を載せるのもいいかもしれません。気になった記事のリンクを貼るとか、読んだ本を紹介するとか。その場でリアクションは無くても、「実はあの本、僕も読んだんですよ」みたいな話になるかもしれないし。

編集部M

それも良さそうですね。書いたことをきっかけに共通点が見つかる、みたいなことが起きれば、次のコミュニケーションのきっかけになりますから。

伊藤

投稿のハードルを下げれば、忙しい会社でもやりやすいかもしれないですね。皆さんご協力ありがとうございました!

まとめ:「チャットで反応がある」だけがすべてじゃない

編集部の検証の結果、以下のようなことがわかりました。

・チャットのコミュニケーションは、「社員の慣れ具合」が重要。まずは「雑談専用のチャットルーム」を作ることから。

・日記を書きこんだからといって、チャット上のコミュニケーションが盛り上がるわけではなかった。

・しかし、盛り上がることはなくても、思いのほか読まれている。リアルの場での話のタネになる場合も。

・なので、「チャットルームで返事をもらう」ことを目標にせず続ければ、結果として社内全体のコミュニケーションにつながる。

・リアルのコミュニケーションのきっかけになるだけでなく、「有事や相談事の意思疎通が円滑になる」等の副次的効果が得られるかも。

「社内チャットで日記を書く」試み、自社のチャットルームに寂しさを感じている人は、身近な同僚を誘ってチャレンジしてみては?

文:伊藤 駿 アイキャッチ:小峰浩美 編集:ノオト、本田・木崎/なるモ編集部

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