2025年6月、東京ビッグサイトで開催された「第5回デジタル化・DX推進展(ODEX)」に足を運びました。会場に入った瞬間から、空気感は“未来”。生成AIやRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)、アバターなどが一堂に並ぶ展示は、単なる技術紹介を超えて、次世代の働き方を肌で感じさせるものでした。
本記事では、編集部が実際に見て・聞いて・体験した内容をもとに、注目のソリューションをバランスよくご紹介します。
SaaSソリューション特集:自治体・企業のバックオフィスを効率化
まず印象的だったのは、バックオフィス業務を効率化するSaaS(Software as a Service)の数々。名刺管理、勤怠管理、経費精算など、日々のルーティンをクラウドで自動化・効率化するソリューションが目立ちました。中でもある企業のブースでは「初期設定不要」「当日から使える」というデモに多くの人が足を止めていました。導入のしやすさと現場ニーズを意識した工夫が随所に光っていました。

▲2025年6月4日(水)~6日(金)まで東京ビッグサイト東1~3ホールにて開催された「第5回デジタル化・DX 推進展(ODEX)東京会場」。過去最多の176社が出展した。
編集部が選んだ注目の6つのAIツール
広い会場内でも特に活気に溢れていたのが、AI活用支援EXPOの区画です。AI関連の展示では、すでに導入済みの企業が「成果を出す」フェーズに入っていることがよく分かりました。単なるツールではなく、業務改善の中核としてAIを活かすには、現場との接続が重要です。会場でも「使えるAI」をテーマにした展示が多く、熱心に質問する来場者の姿が印象的でした。今回はその中でも編集部が気になった6つのツールをご紹介します。
複数ツールを横断するAIエージェントの実力「JAPAN AI」
「JAPAN AI」が展示していたのは、複数の業務ツールを横断して業務を自動で進めるAIエージェント。ユーザーが行うのはデータのインプットとチェックだけ。その他の、文字起こしから議事録の作成、次のアクションを抽出してメールを作成し、管理ツールに入力するといった複雑なフローを自動で行うことができます。実際にデモを見た際は、PC画面の中でAIが黙々とタスクを処理する様子に圧倒されました。「AI秘書」が本当に実現している現場を垣間見た瞬間でした。

▲複雑なタスクを複数の業務ツールを横断しながらこなせる「JAPAN AI」のAIエージェント。
生成AIの定着を促す実践型研修を勧める「SHIFT AI」
またDX、AI人材をどう確保するかが多くの企業や自治体の課題となる中、生成AIの業務での活用率を高めるための研修を提供する「SHIFT AI」のサービスも注目を集めていました。「SHIFT AI」では「AIを導入したけど使いこなせない」という企業の課題に応えるため、AIの実践スキルを磨くためのワークショップ+eラーニングとを組み合わせた研修サービスが紹介されていました。AIツールの導入はもはや当たり前で、業務ごとにどう活用して具体的な成果に結びつけるかという結果が求められるフェーズに移行していることがよくわかりました。

▲AIの実践活用を身につける研修プログラムを提供する「SHIFT AI」。
テキストから60言語ナレーション動画を自動生成「WRITEVIDEO」
現在、生成AIはテキストから画像、映像と広がってきていますが、会場では映像×AIのソリューションも多く目にしました。たとえば「WRITEVIDEO」はその名の通り、文章を入力するだけで、ナレーション付きの動画を生成してくれるAIソリューション。企業研修やマニュアル、商品紹介などへの応用が期待されています。ブースで生成された動画は非常に自然で、60言語対応という点にも驚かされました。「手間もコストも抑えた動画制作」を実現するツールとして、まさにDX時代にふさわしいサービスでした。

▲文書を入力するだけで映像を作り出す「WRITEVIDEO」

▲入力した文書をもとに、AIナレーターが説明する動画を簡単に作成できる。動画は60言語で作成可能。医療分野などですでに導入されている。
声と唇も翻訳!低コスト多言語動画作成「こんにちハロー」
「こんにちハロー」は、日本語で話した映像を、他言語の音声と自然な口の動きで再現する多言語動画生成サービスです。37言語に対応し、翻訳内容はAI翻訳+人のチェック付き。実際に再生された映像では、話者本人の声のまま英語を話し、口元もまったく違和感がありませんでした。インバウンド対応したい個人商店で利用されることが予想されます。

▲「こんにちハロー」は、翻訳チェックやリップシンク機能までついて30秒1万1000円で制作可能。
アバター×LLMで自然な製品説明ができる「nico」
アバター×生成AIのソリューションの展示もありました。DuoTechの「nico(ニコ)」は、複数のLLM(大規模言語モデル)と連携した会話が可能なアバター。自社製品に関する情報などを事前に登録することで、自然な会話の中に製品説明やサービス紹介といった内容を盛り込むことができます。多言語にも対応し、タブレットやサイネージのほか、WEBに組み込むことも可能。話す内容に応じた、ごく自然な音声と表情が特徴で、リアルな人物からマスコットまで好きなアバターで会話を実現できます。展示会や受付、WEB接客など、対人コミュニケーションの代替手段としての可能性を大いに感じました。 。

▲アバター×生成AIの魅力を伝える「nico(ニコ)」の展示ブース。

▲LLMの最適化により、シチュエーションに応じた応答速度で自然な会話、表情での受け答えできる「nico(ニコ)」。
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営業現場の今を見える化するモバイルDX「UPWARD」
セールス高度化・効率化EXPOでは、外回り・訪問営業のDXソリューション「UPWARD」に目が留まりました。モバイルアプリの地図上に顧客をマッピングできるだけでなく、蓄積された顧客および営業活動データから、ピンの色や大きさで訪問の優先度を見える化できます。訪問・滞在の報告も自動検出で簡単に行えます。実際に触ってみた操作感は非常に直感的で、営業経験者からは「これがあれば回り方が変わる」と直観的なUXに驚きの声が上がりました。

▲営業効率化アプリを紹介する「UPWARD」の展示ブース

▲顧客の重要度を色分けしたり、訪問優先度が高いほどマークを大きくするなど、直観的に優先順位がわかる。

▲訪問先や滞在時間を自動検知して、報告作業をサポートしてくれる。
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情報漏洩対策に高まる注目:自治体・企業のセキュリティ最前線
自治体デジタル化支援EXPOには、「なるモ」を運営しているアイキューブドシステムズがモバイル端末の紛失や情報漏洩を防ぐための管理ソリューション「CLOMO MDM」のブースを出展しました。その一角には情報漏洩対策ソリューションを提供する、ワンビのコーナーもありました。熱心に説明を聞く参加者の姿に改めて、リモート&ハイブリッドワーク化で課題となっている、セキュリティ対策への関心の高さを感じました。

▲ブースではISMAP登録のマルチOS対応のMDMサービスを展示

▲熱心な問い合わせも多数あり、モバイル・セキュリティへの注目の高さが伺えました。
ODEXは未来の働き方を体験できるリアルDXの現場だった
今年のODEXでは単なる製品紹介ではなく、実際の業務にどのように組み込めるかまで想像させるソリューションが多数展示されていました。講演では自治体のDXのユースケースや、業務の課題解決に向けたAI活用事例など、注目されたセッションが数多くありました。
イベント全体を通して、企業や自治体のDXにおいてすでにAIの活用範囲が多岐に及んでいること、ツールとして導入するフェーズからAIをどう最適化して成果につなげるかという「DXの実装フェーズ」に突入したことを強く実感するイベントでした。
しかしAIの活用が広がるほど、その裏側で求められるのが守りの強化です。情報漏洩や端末管理といったセキュリティ対策の重要性も、各展示からはっきりと伝わってきました。
攻めのAIと守りのセキュリティ、その両輪がそろってこそ、DXは真に機能するのでしょう。
今後の働き方を一足先に体感できる場として、ODEXの価値はますます高まりそうです。
取材/文・太田百合子 イラスト:yori. 編集:木崎・稗田/なるモ編集部