ネットのパーソナル診断、なにがわかる? それぞれの結果を比較してみた

会社でやるものからWebで気軽に受けられるものまで、世の中にある様々な「自己診断コンテンツ」。ビジネスの観点を重視したものから性格診断まで、それぞれの目的や内容にあわせた診断コンテンツがたくさんあります。

そんなこれらの自己診断コンテンツ、それぞれどういった特徴があり、受けることでどんな結果が得られるのでしょう。たくさんある自己診断コンテンツを自分の目的にあわせて活用するなら、どういったものを受けてみるのがいいのでしょうか。

せっかくなら、いろいろな自己診断を上手に利用して、仕事にプライベートに生かしていきたい! ……ということで今回は、Webを通して受けられる自己診断コンテンツを複数体験。それぞれの特徴を把握し、その活用方法を考えていきます。

注:本記事は、それぞれの診断コンテンツの内容を紹介するものであり、それぞれの正確性を保証するものではございません。

自分の強みと生き方の指針が見つかる「ストレングス・ファインダー」

まずチャレンジしたのが、強みを知るための自己診断としておなじみの「ストレングス・ファインダー」※。組織運営や個人のマネジメントのため、入社したら全員がストレングス・ファインダーを受ける、という会社もあるそうです。

※ 「ストレングス・ファインダー」は、米国ギャラップ社による登録商標です

思考や行動のパターンから、自分の「強み」を見つけ、その特性や傾向について理解する、というのがストレングスファインダーの主な目的。設問に回答するだけで、全部で34ある素質の中から自分がもつ資質とその適正がわかります。公式のWebサイトによると、現在までに全世界で2800万人以上が受験している、とのこと。

さあ、才能(じぶん)に目覚めよう 新版

▲今回は、『さあ、才能(じぶん)に目覚めよう 新版 ストレングス・ファインダー2.0』(トム・ラス著、古屋博子訳、日本経済新聞出版)を購入、そのアクセスコードを使用してWebサイトから診断を受けた

診断は、同社Webサイトから受けることができます。回答が終わると、結果はそのままブラウザ上で確認が可能。ドキドキしながら結果をチェックしたところ、筆者が持つ強みは、上位から「戦略性」「コミュニケーション」「ポジティブ」「着想」「自己確信」という結果になりました。

2位の「コミュニケーション」はなんとなく納得の結果。3位の「ポジティブ」も、友人から「絶対入っているよ!」と言われていたので嬉しかったのですが、気になるのは1位の「戦略性」と5位の「自己確信」。この2つを併せ持っている人間は「計算高いナルシスト」にしか思えないのですが……。

そこで、それぞれの内容を知るために診断結果と一緒に表示される解説文を読んでみることに。

ストレングスファインダーでは、それぞれの強みごとに、かなり詳細な解説文が用意されていることも特徴のひとつ。診断にあたって購入した書籍『さあ、才能に目覚めよう』には、強みの対する得意分野を紹介する『行動アイデア』や、『〈◯◯(各資質)〉が高い人との働き方』が、詳しくまとめられています。

例えば、「戦略性」の資質を持つ人の行動アイデアには、以下のような記載が。

・可能な限り自分の直感的な洞察を信じましょう。(中略)あなたの直感は本能的に予測し予想する脳によって生み出されたものです。自分の見解に自信を持ちましょう。(『さあ、才能(じぶん)に目覚めよう』、P158〜59より)

なるほど。ストレングス・ファインダーにおける「戦略性」とは、どうやら「起きることを先読みする力」や「目的達成のための方法を考えられる力」を指している様子です。解説文をじっくり読むと、言葉の印象もだいぶ変わってきます。

また、もうひとつの資質『着想』について、改めて書籍をチェックすると、こんなことが書かれてありました。

この人は言葉が持っている力を楽しみます。コンセプトやアイデア、パターンにぴたっとあてはまる言葉の組み合わせが心に浮かんだらこの人と共有しましょう。この人の思考を刺激するはずです。(同書P.170より)

読むほど自分への理解が深まり「なるほど、これは私だ!」と感じることができました。

うれしいのが、強みがわかるだけでなく、資質ごとに行動アイデアとアドバイス内容が用意されており「実生活で、強みをどう生かすか」をきちんと示してくれるところ。

自分以外の誰か、たとえば上司や部下の資質がわかれば、彼らとどうコミュニケーションをとり、強みをどう生かすかを考えることができそうです。可能なら、仕事チームみんなでストレングス・ファインダーをやってみるのも良いかもしれません。

■ストレングス・ファインダーの特徴 ・テストを受けるためには数千円の費用がかかる ・テストはWebで30分程度。自分の強みである、「資質」が把握できる ・自分の資質を生かすための指針が示されており、行動の参考にできる

■ストレングス・ファインダーがおすすめの人 ・新しい挑戦をするにあたり、自分の「強み」を知りたい人 ・ある程度の社会人歴を経て、今後の生き方に悩んでいる人 ・「自分の強みがわからない」と悩んでいる人

他人から見た自分がわかる「16タイプ診断」

しかし、診断を受けるためには時間もお金もかかるストレングス・ファインダー。「もっと気軽にできる自己診断はないものか……」と探したところ、見つかったのが「16タイプ診断」。Web上でも、5分程度で受けられるカジュアルな性格タイプ診断です。

16タイプ診断とは別名「MBTI診断」とも呼ばれ、書籍『図解 あなたの天職がわかる16の性格 ストレスなく自分の能力が最大限評価される仕事が見つかる性格診断』(ポール・D・ティーガー、バーバラ・バロン著、栗木さつき訳、主婦の友社)によると、以下4つの特質を組み合わせた16の性格タイプを導き出す診断とのこと、とされています。

▼どのように他人や社会と接し、どのような状態にあると元気が出てくるか E:外向(Extroverted)⇔I:内向(Introverted) ▼どちらの情報に注意を払っているか。 S:五感(Sensing)⇔N:直感(Intuitive) ▼どのように決定をくだすか。 T:思考(Thinking)⇔F:情緒(Feeling) ▼どのようにものごとを進めるか(早めに決断をくだそうとするのか、それとも、できるだけ情報を多くとりいれてから決断をくだそうとするか)。 J:決断(Judging)⇔P:柔軟(Perceiving) (『図解 あなたの天職がわかる16の性格』P.17より)

診断の結果、上記のなかから自分に近い性質が4つ選ばれ、その組み合わせが16通り。16タイプそれぞれに名前がついていて、その性格の特徴が示されます。

筆者が診断されたのは、「社交家(ESFJ)」タイプでした。その特徴は、「人の役に立ち感謝されたい人、思いやりに溢れた社交的な人」とのこと(いずれも同書より)。

自分自身では「楽天家」や「冒険家」タイプかな? と思っていましたが、ここではちょっと違う結果に。「社交家」と言われてもなかなかしっくり来ないのですが……。

そこで、「社交家」タイプの特質をより詳しく見ていくことにしました。タイプ名についている「ESFJ」とは、各特性のうち「外交(E)」「五感(S)」「情緒(F)」、「決断(J)」を併せ持つ性格、ということを示しています。

つまり「どちらかというと内向的で、人の感情も含めた様々な要素を考慮しつつ、最終的には直感で決定を下すタイプ」といったところ……。これって、ストレングス・ファインダーの「戦略性」となんだか似ている気がします。

他にも、ストレングス・ファインダーが示す『コミュニケーション』の要素など、それぞれ似た部分が見受けられます。これは、性格と強みが噛み合っていて、「自分らしく生きられている」ということなのかも……?

今回の検証で使用した16タイプ診断のWebコンテンツ『16 Personalities』では、各16の性格タイプについて、「建築家」や「起業家」など、それぞれに個性的な名前が付けられているのが特徴。「社交家」は、こちらでは「領事官」タイプと名付けられていました。

16タイプ診断の結果イメージ

▲他には「楽天家」「指揮官」など。強いキャッチコピーがつくことで、性格がよりわかりやすくなる?

他にも、同Webコンテンツ上では、それぞれの性格タイプを持つ有名人も紹介されています。

例えば領事官タイプだと、歌手のテイラー・スウィフトさんや、小説『シャーロック・ホームズ』シリーズに登場する、ホームズの下宿先の主人であるハドスン夫人もこのタイプとのこと。有名映画シリーズのキャラクターが登場することもあり、「自分は、◯◯と同じタイプなんだ!」と新たな発見ができることも。

■16タイプ診断の特徴 ・回答時間は5分程度でできる。設問数は60問。 ・16タイプの中から1つ近いものが導き出される ・それぞれにキャラクターが設定されるので、結果を見て楽しめる

■16タイプ診断がおすすめの人 ・他人からどう見られているかを知りたい人 ・自分のキャラクターと、そのロールモデルを探している人 ・話のきっかけとして、カジュアルに性格診断をやりたい人

自分の自我の傾向を知ることができる「エゴグラム」

最後に、もう少しポイントを絞って自分の性格を知るためにやってみたのが、「エゴグラム」です。

エゴグラムはアメリカの心理学者によって始められた心理分析のひとつで、人の心の中にある「自我状態」を5つに分け、そのうち自分が強く持っている要素がわかる、というもの。5つの自我について『エゴグラム入門 自己分析で適正がわかる』(津田太愚 著、イーストプレス)では、次のように記されています。

1、CP(Critical Parent)……きびしい父親のような部分 2、NP(Nurturl Parent)……やさしい母親のような部分 3、A(Adult)……合理的な大人のような部分 4、FC(Free Child)……元気な子供のような部分 5、AC(Adapted Child)……親のいうことをきく子供のような部分 (『エゴグラム入門 自己分析で適正がわかる』P.9より)

いくつかの設問に答えていくことで、自分だけのエゴグラムができあがります。Webサイトでチャレンジできる無料のエゴグラム診断をやってみると、このようなグラフが表示されました。

エゴグラムの結果例

▲図版は筆者の診断結果をもとにオリジナルで作成したもの。書籍『エゴグラム入門』では、グラフの形で23パターンの傾向が定められている

例えば、5要素のうちのひとつ「CP」は、当人の「厳格な父親らしい部分」を示したもので、この項目が高い人は、ルールを守ることを大切にする責任感が強い人です。逆にCPが低い人は、他人に批判的ではないもののルーズで適当なところがあるかもしれません。

筆者の場合、母親らしい部分(NP)と大人らしい部分(A)、無邪気な子どもらしい部分(FC)が多く、一方で父親らしい部分(CP)と親の言うことを聞く子どものような部分(AC)が少ない、という結果が出ました。

良くいえば、理性的で周囲の人にやさしい、マイペースな人。悪くいえば、子どもっぽく自己中心的な人。こういった台形型の診断結果を、エゴグラムでは「エンジョイタイプ」と呼ぶようです。

この「エンジョイタイプ」は、ストレングス・ファインダーの『ポジティブ』や『自己確信』と共通している部分がありそうです。

筆者はテンションが高くなると「自分が楽しいんだから、周りも楽しいはず!」とついつい周囲の人を巻き込みたくなります。そういった「マイペースさ」や「自由さ」は、エゴグラムの「CP」や「AC」の低さに由来するものなのかもしれません。

もし、普段の自分に対して気になることがあるのなら、エゴグラムを参考に自らの立ち振舞いを見直してみる、という使い方もできそうです。

筆者は自分の自由奔放さは治らないものだと思っていましたが、点数が低い項目を意識し「もっとルールを守り、高い理想を持つことを心がける」というように、エゴグラムを行動をかえる指針とするのもありでしょう。

■エゴグラムの特徴 ・性格より深い場所にある、自我とその傾向がわかる ・かなり結果が複雑に出るので、分析が必要 ・結果をもとに、自分の行動を見直すきっかけになる

■エゴグラムがおすすめの人 ・自分を変えたいと思っている人 ・理想の自分に近づくヒントが欲しい人 ・学生や新卒社員など、自分の傾向がまだわからない人

診断結果を比較することで、新しい発見ができる

各診断はそれぞれ内容や目的は違うものですが、とても興味深いのが、その診断結果同士を見比べると一貫した共通点が見出だせたことでした。

筆者の場合、全体を通して共通していたのが「外交的でポジティブ」ということと「合理的な考えに基づく意思決定」という2点。これが筆者の性格とその強みなのでしょう。

しかしながら、16タイプ診断で出た「情緒」やエゴグラムの「FC」など、気持ちや感覚を重視する一面も、という結果も出ています。「合理的」と「感情的」。それぞれ相反する要素に見えますが……個人的には、この結果に対して、それなりに納得感しているのも事実です。

例えば「仕事では厳しい人が、自分の子どもにはデレデレ」のように、場所と状況に応じてキャラクターを使い分ける人も少なくありません。それは「どちらかの人格がフェイク」なのではなく、それぞれが矛盾せず両立されているもの。いくつか診断を受けることで、そういった「人の二面性」が浮き彫りになることもありそうです。

ストレングス・ファインダーについては夫婦でもやってみたのですが、筆者の夫は「分析思考」「公平性」「慎重さ」が出ていて、これもお互い納得する結果に。喧嘩することがあれば、夫の強みである「公平性」に託してジャッジしてもらおう……なんて使い方もできるのかな、と思いました。

各診断を木の幹で例えると

▲各診断内容の位置づけを、自分を木の幹に例えるとこんな感じ?

今回は検証のため3つの診断をやってみましたが、それぞれの特徴や出る結果も様々。それぞれの傾向を知って、自己分析や社内のチームビルディング、はたまた雑談のタネに使ってみると、新しい発見がありますよ!

文:つるたちかこ 図版・イラスト:藤田倫央 編集:伊藤 駿/ノオト、本田・木崎/なるモ編集部

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