オンライン会議の「音」を快適に! 会議用イヤホンを使ってみよう ―プロに聞く選び方編

世界がコロナ禍になって早3年。働く人々の間ではリモートワークが身近な存在になり、同時に「オンライン会議」が日常になりました。ビデオ通話アプリを使えばどこでも会議室になる時代です。

オンライン会議の必須アイテムと言えば、音を聞くためのイヤホン。普段音楽を聴いたり動画を観たりする際に使うイヤホンを、そのまま会議で使っている人も多いのではないでしょうか。

音楽用イヤホンと会議用イヤホンを使い分けて、日々のオンライン会議をもっと快適にしたいところ。さらにプライベートと仕事で使い分けることで、気持ちのオンオフもしっかり切り替えたいです。

というわけで今回は企画の前編として、イヤホン・ヘッドホン専門店「e☆イヤホン」のWEB本店・店長のケイティさんと、広報の三友卓哉さんに、会議用イヤホンを選ぶポイントを伺いました。

登場人物紹介

ケイティさん

ケイティ(東谷圭人)さんイヤホン・ヘッドホン専門店「e☆イヤホン」のWEB本店・店長。好きなイヤホンはAAWの「AXH」(耳型を採取して作るオーダーメイド品)。

三友さん

三友卓哉さんイヤホン・ヘッドホン専門店「e☆イヤホン」の広報室・室長(当時)。好きなイヤホンはソニーの「WF-1000XM4」。

ハイスペックすぎる機能は、会議用だと持て余すことも

ケイティさんと三友さん

▲「e☆イヤホン」本店・店長のケイティさん(左)と、広報の三友卓哉さん(右)。取材はオンライン会議ツールにて

——早速ですが、本日のようなオンライン会議で使うイヤホンを選ぶ際、気にすべきスペックや注目ポイントはありますか?

ケイティさん
ケイティさん

ずばり『マイクが付いているか否か』ですね。正直、PC内蔵マイクの方が高音質で声を届けられる場合もあるのですが、その代わりにキーボードを叩く音や周りの騒音も全て拾ってしまうんです。会議中だとPCでメモを取る場面も多いですし、騒がしいオフィスやカフェなどで会議に参加することも多いと思います。となると、PC内蔵マイクよりも口元に近く手元から遠いイヤホン内蔵マイクを使う方がより聞こえやすい声を届けられるんです。

三友さん
三友さん

特にノートPCだと、パンタグラフキーボードの「パタパタ」とした音が入りやすいかもしれません。自分ではわからないと思いますが、同席者からすると少しつらく感じる人もいるでしょうね。

ケイティさん
ケイティさん

あとはマイク付きのワイヤレスイヤホンを使えば、多少離席しても会議に参加し続けられるのも便利です。ちょっと飲み物を取りに行くくらいだったら、会議の流れを切らずに話しながらでも離席できますよね。ほとんどのワイヤレスイヤホンにはマイクが内蔵されているので、わざわざPC内蔵のマイクを使う必要は無いかと。

——今までPC内蔵マイクを使っていましたが、知らない間にタイピング音でうるさくさせていたかもしれないですね……。では逆に、会議用イヤホンとして選ぶなら特に気にしなくてもいいポイントなどはありますか?

ケイティさん
ケイティさん

オンライン会議でしか使わないのであれば、イヤホンがどの音声コーデックに対応しているかは気にしなくても構いません。コーデックとは、Bluetoothで接続先のデバイスからイヤホンに音声データを送る際の、データ圧縮方式のことを指します(SBC、AAC、aptX、LDACなど)。音楽や動画音声を再生する場合はこのコーデックによって音質が変わってくるんですが、通話時にはその限りではありません。

「高音質!」「〇〇コーデック対応!」と書かれていても、通話時の音質が変わるかと言われるとそうではないんです。音楽用イヤホンだとかなり重要なポイントですが、会議用イヤホンだったらこの部分はあまり気にしなくても大丈夫ですよ。

——ハイスペックなイヤホンを買っても、会議用だとそのスペックを持て余してしまうんですね。

ケイティさん
ケイティさん

スペック面で気にしたいポイントがたくさんあるのは、やはり音楽用イヤホンです。会議用イヤホンでしたら特段気にすべきスペックはあまり多くないので、初心者でも選びやすいのではないでしょうか。

会議用イヤホンは「音質」ではなく「適材適所」で選ぶ

——では次に、イヤホンの形でなにかおすすめはありますか? カナル型やインナーイヤー型、骨伝導など、昨今様々な形のイヤホンが販売されていると思うのですが。

ケイティさん
ケイティさん

これは完全に、好みですね。

三友さん
三友さん

好みもそうですが、イヤホンの形によって適材適所があるということも知っておいてほしいです。

例えばカナル型は、イヤホンと同時に耳栓の役割も果たします。ですから、少し騒がしい場所でも気が散ることなく会議に参加できるはずです。ただ耳の穴が蒸れやすいので、長時間使う場合はそういった不快感を覚えてしまう恐れもあります。一方でインナーイヤー型は、耳を密閉しないので蒸れなどは少ないですが、その分周囲の騒音も耳に入ってきてしまいます。

私はShokzの「OpenComm」という骨伝導イヤホン(※)を使っているのですが、これだと耳穴をふさがず周囲の音が100%聞こえるので、宅配便が来ても家族に声をかけられてもすぐ気付くことができます。ただ駅のホームで電話を取ると、ボリュームMAXにしても電車の音で通話音がかき消されてしまいます(指で耳穴を塞ぐと聞こえやすくなります)。

※骨伝導イヤホン:音で鼓膜を振動させるタイプとは異なり、こめかみといった耳周辺の骨などを振動させることで聴覚に音を届ける仕組みのイヤホン。

骨伝導イヤホンを説明してくれた三友さん

▲取材時に使っていた骨伝導イヤホンを説明してくれた三友さん

ケイティさん
ケイティさん

カフェだと人の声が混ざり合ってしまうので、混乱してしまうかもしれませんね。骨伝導イヤホンは騒がしい場所には不向きです。

そのほか、ヘッドホンは「会議してるよ」感を強く出せるので良いですね。イヤホンだと会議中と気付かれず周囲の人に話しかけられてしまうのですが、ヘッドホンだと話しかけられずに済みます。今日はイヤホンの取材だったのでイヤホンを使っていますが、普段はRazerの「Barracuda」というゲーミングヘッドホンを使っています。

——なるほど。どのイヤホンにも一長一短があるということですね。

ヘッドホンを見せてくれたケイティさん

▲普段会議で使っているヘッドホンを見せてくれたケイティさん

ケイティさん
ケイティさん

はい。使う場面が限られているならイヤホンを1つに絞ってもいいのですが、オフィスや家、カフェなど色々な場所で会議に参加する人は、場面に応じたイヤホンを持っていた方がいいかもしれません。

——最近だと、イヤホンには「ノイズキャンセリング」や「外音取り込み」などの機能が搭載されているものも増えました。そのなかで、会議用イヤホンにおすすめな機能はありますか?

ケイティさん
ケイティさん

最近だと「マルチポイント」という機能がお客さまから人気ですね。これは複数台のデバイスに同時接続できる機能で、いちいちBluetoothの設定をオンオフせずとも音声を流すデバイスを変えられるんです。例えば仕事中にスマホでラジオなどを聞いていて、時間になったらぱっとPCから会議に参加できる。そういった切り替えがシームレスにできて、会議用イヤホンとしては便利な機能だと思います。

三友さん
三友さん

複数のデバイスから同時に音を聞けるわけではないのですが、一方の再生を停止して、もう一方の音を再生するだけで接続が切り替わるすぐれものです。

——コロナ禍でオンライン会議が主流になった昨今、イヤホンの売れ行きなどはコロナ禍以前と比べて何か変化はあったのでしょうか?

ケイティさん
ケイティさん

今お話したマルチポイントは、コロナ禍以降で人気になりましたね。コロナ禍以前は機能の名称すら知れ渡っておらず、搭載されているイヤホンでもあまり大々的に表示されていませんでした。最近はマルチポイントをアピールする製品が増えたように思います。

また、骨伝導イヤホンはコロナ禍以前と比較して売上がおよそ25倍になりました。

——25倍⁉ それはすごいですね。

ケイティさん
ケイティさん

以前はスポーツ用として使われていた、ニッチなジャンルだったんです。しかし、コロナ禍でオンライン会議が増えたことによって「長時間着けても疲れない」「周りの音がちゃんと聞こえる」と口コミで話題になり、いまや立派な1ジャンルとして成長しました。

それに、僕が普段使っているようなゲーミングヘッドセットもコロナ前と比べて約16倍の売上になりました。イヤホン・ヘッドホン市場は、コロナ禍でだいぶ変わったなと思います。(骨伝導、ゲーミングともに2019年と2021年の売上を比較)


オンライン会議中に、自分は周囲の音を取り入れたい派なのか、シャットアウトしたい派なのか。後者なら、会議に参加する場所はどれほど騒がしいのか。ただハイスペックで高級なモデルを選べばよいというわけではなく、使用場所や用途によって「適材適所」のイヤホンを選ぶことが会議用イヤホンをうまく選ぶコツ、とのことでした。

なるモ編集部も、普段の会議や取材はオンラインで行うことがほとんど。イヤホンは必須アイテムです。本企画の後編ではe☆イヤホンのお二人に、オンライン会議におすすめのイヤホンを価格帯ごとに4種類ご紹介いただき、なるモ編集部が実際にオンライン会議で試してみたいと思います。

プロが選ぶおすすめの会議用イヤホンとは? そしてなるモ編集部は、いつも使っているイヤホンとの差を感じ取ることはできるのでしょうか?

後編へ続く)

取材・文:中込有紀/ノオト アイキャッチ:サンノ 編集:ノオト、本田・木崎/なるモ編集部

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